FILE45  イチリンソウ
 山麓の草地や林内などに生える高さ20〜25cmの多年草。根生葉は地下茎の先に付くが、花茎の基部には付きません。茎のように見えているものは、花茎とよばれ、葉(3枚)のように見えているものは、茎葉とか苞葉と呼ばれます。直径4cm位の大型の花です。
 イチリンソウはもちろん「一輪草」の意味で、茎に花が1個しか咲かないところから来ています。真っ白な5枚の花弁状の萼片をもつ大型の花が花茎の先に1個だけ咲きます。直径が4cmほどもありますから非常に目立ちますが、石川県では、かなり珍しい部類に属します。
 次の「ニリンソウ」「キクザキイチゲ」と同じくキンポウゲ科の「Anemoneアネモネ属」の植物であり、同じく「春植物」と呼ばれています。
 「春植物」とは、周りの木々が葉を開く前の早春に茎や葉を地上に出して花を開き光合成を行い、木の葉で陰になる初夏には地上部が枯れてしまい、地下の根茎で後の季節をひっそりと暮らす植物を指す生態学的な言葉です。そのはかなさ故に「Spring ephemeral」とも呼ばれます。ephemeral(エフェメラル)とは、カゲロウなどのように、現れてすぐ消える短命な生き物のことをいい、カゲロウの学名の一部(Ephemeron)にもなっているそうであります。春の日の夢とでもいうような生物を指す言葉です。
 アズマイチゲ、ヤマブキソウ、カタクリ、アマナ、フクジュソウ、セツブンソウ、コバイモ、ミチノクエンゴサクなども、春植物です。
 これらの春植物を見て、何か共通点があることに気が付かれましたか。どの植物も柔らかですね。ちぎるとすぐにフニャフニャとしおれてしまいます(実際にちぎらなくてもいいんですよ。そんな感じがするでしょう。)。枯れる場合にも、ほとんど溶けるように、まさに消滅するような感じで枯れます。繊維質がほとんど残らないのです。芽吹いてからほんの1〜2か月の間に、花を咲かせて種子を作り、来年の準備をして枯れていかねばなりません。繊維組織にコストをかけるゆとりがないのでしょう。水分を細胞内にみなぎらせて、その膨圧で姿勢を保っているのです。ある調査によれば、春植物は最も多汁質(地上部の約9割が水)で、かつ最もしおれやすい植物であると言われます。〔参考文献 プランタ 第8号 研成社 1995〕 
 
 

花模様