FILE78  コシノコバイモ Fritillaria koidzumiana Ohwi

図1 葉の陰に釣鐘型の目立たない花を付ける。(平成14年3月21日)

 北陸の春を代表する春植物(スプリング・エフェメラル)(ここをクリック)の一つです。高さ5〜20cmほどの小草で、葉陰に下向きの目立たない花を一つ付けます(図1)。福島県(西部)と山形県の県境を北限にして、新潟県、富山県、石川県、福井県など主として越後・北陸地方の日本海側と長野県、岐阜県北部、愛知県北部、静岡県に分布するということです。(みねはな 51号 内藤登喜夫 による)
石川県では、加賀の山地のあちこちで見ることができます。
 学名の Fritillaria は「さいころを入れる筒」の意味で、花の形からきたものでしょう。高山植物として有名なクロユリと同じ属です。そう言えば、クロユリに似た感じもいたします。
 若いときには、図2のように1枚葉で、毎年枯れながら少し成長した葉を出し、数年掛かってようやく開花に至ります。花を上げられるサイズになると、突然5枚の葉をもつようになり開花します。5枚のうち、下部の2枚は対生で、上部の3枚は輪生です(図3)。

 
図2 若い株。1枚葉の状態を数年繰り返す。
図3 開花株の葉。下の2枚は対生。上の3枚は輪生。

 コシノコバイモの特徴は、花被片の縁に小突起があることです。花被とは、用語解説のページで詳しく説明してありますが(ここ)、花弁と萼片の両者をまとめて呼ぶもので、コシノコバイモの場合には、外花被片(萼片に相当)3枚、内花被片(花弁に相当)3枚とからなっています。さて、この小突起をクローズアップで撮影しようとしたのですが、なぜかはっきりと写すことができません(図4)。気が付いたことは、小突起の見えない花(図4)と、はっきり見える花(図5)があるということでした。この違いはどこにあるのか、おわかりでしょうか。
図4 小突起の見えない花  図5 小突起の見える花

図6 一つの花の花被をバラバラにして並べた。縁に小突起の無いのが外花被片で、小突起のあるのが内花被片

 図6は、6枚の花被片を並べたものですが、縁の小突起が見えないものと明瞭なものとが交互に並んでいるのに気づかれたでしょうか。縁に小突起の無いのが外花被片で小突起のあるのが内花被片なのです。 開花状態では、外花被片が外側にあるので、内花被片の縁を覆うように咲いていることがしばしばあります。この場合には、小突起が外部からは見えないことになります(図4)。 花被片が離れているときには、内花被片の小突起が見えることになります(図5)。 このように、花被片の開き具合によって、見え方が異なりますから、「1枚の写真だけで、同定をするには、限界があることになります」。ネット上でも写真判定を求められることがよくありますが、特徴のはっきりした写真を提供しなければならない理由は、こんなところにもあります。

 
図7 花被片の中央に蜜の貯まった腺体がある。  図8 縁の小突起。最小目盛りは0.1mm。

 花被片を顕微鏡で観ました(図7)。花被片の中央には腺体があり、蜜が溢れていました。なめてみました。量が少ないので、あまり強くは感じませんでしたが、確かに甘いようでした。この腺体の縁にも小突起があります。図8は、縁の小突起を拡大したものです。スケールは、目盛り付きスライドガラスで、最小目盛りは0.1mmです。
 

図9 花の内部。柱頭は3裂。  図10 雄しべの花糸は平滑。
 

 花糸や花柱に突起がないことや花の形で、コバイモ類は同定できるようです。

 最後に、コシノコバイモの全体の姿は、表紙集 平成12年5月(ここをクリック)にもありますので、ぜひご覧下さい。
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誌2005
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