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図10 果実は緑色に熟する。
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図11 完熟すると、果穂がもろくなって崩れ落ちる。
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ミズバショウの果実は、6〜7月にかけて緑色に熟します。同じサトイモ科のマムシグサが秋に赤く熟するのとは大違いです。かつて、一般向けの参考書で、赤く熟すると書いてあるのを見たことがありますが、まさに空想の産物です。そのように記載されている文献をご覧になりましたら、ご一報下さい。
7月15日に、白山麓の自生地で果実の取材を行いました。果穂は熟するに伴い長く・太くなります。完熟すると内部がスボンジケーキ状にふわふわになり(適切な表現を思いつきません)、形を保っていることができなくなって、地上へ崩れ落ちます。子房の部分もふわふわしていて、つまむとバラバラに崩れてしまいます。このスボンジケーキ状の構造は、水に会うと溶けるように分解し、種子は流れに乗って分布を広げることができます。
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図12 果実。先端の円錐状のものは、雌しべの柱頭。下部は子房。
手に取るとぼろぼろの断片になってしまう。
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図13 2個の果実を拡大したもの。それぞれ、子房は2室で、各室に上下に並んで2個の種子がある。 |
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図14 2個の種子は弾力のある薄い膜で包まれている。臍(へそ)はくぼんでいる。種子1個の大きさは、約4mm。
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図15 臍(へそ)の反対側は、ドーム状に盛り上がっている。その頂部から発芽するはずである。
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図12は果実をアップしたものですが、とんがり帽子のように見える部分は、雌しべの柱頭です。その下の長方形に見える部分はふわふわのスポンジケーキのようになっており、簡単に崩れてしまいます。そのふわふわしたもの(子房の組織)を取り除くと種子らしいものが左右に現れてきます。それぞれは、2個の種子が縦に連なったものであることが分かります(図13)。2個の種子は、弾力のある薄い膜に包まれています(図14)。すなわち、1個の果実の中には、子房が2室あり、それぞれに種子を2個ずつ含んでいます。
それぞれの種子は、つぶれた円盤状で、片面が吸盤のような形をしており、こちらは臍(へそ)であり(図14)、反対側はドーム状に盛り上がって(図15)、その頂部から発芽します。
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図16 木道上で食べられた果実。右のものは古くて干からびている。
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図17 トウモロコシをかじったような形で食べられている。
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図18 花柄が折られて食べられている。 |
図19 地上で食べられている。 |
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図20・図21 種子が散らばったのが、7月半ば、約2週間でここまで育った。図15で予測したように、臍(へそ)の反対側の種皮を破って根と葉が伸びている。細い方が根で、太い方が葉である。(平成13年8月5日) |
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