FILE15  ハシリドコロ
  斜面全体がハシリドコロに被われている(驚異)。 この日は霧が深かった。
 何十年も前の新聞に、「薬草のハシリドコロが、以前は白山山系の渓谷に多産したが、乱獲のため最近はほとんど見ることができなくなった」と言う記事があり、強く印象づけられて実物を見たいと願っていた植物です。
 十数年前(昭和61年)に同僚に教えてもらってはじめてお目にかかりました。
 花がとくに美しいというものではありませんが、有名な薬草であり、毒草でもありますので紹介します。芽だしの頃は特に柔らかくかつ美味しそうに見えるので中毒事故が時々発生しています。「ハシリ」は、これを誤食すると、幻覚が生じて走り回るということから来ており、「トコロ」は、根茎が芋のように肥大するので、やはり太い根茎を作るヤマノイモ科のトコロの名を借用したものであります。

 
今年の5月、白山山系の山で、斜面一面を被う大群落に出会い、昔の興奮が呼び覚まされたので、ここに登場する運びとなりました。
 オメキグサ、キチガイイモ、キチガイ草などの異名もあるとのことですから、その毒性の強さも見当がつくのではないでしょうか。最近の新聞記事では、平成8年4月8日、島根県の農業体験事業の参加者が、近くの川辺で採ったハシリドコロをそれとは知らずに食べて、しびれや幻覚症状で11人が入院した(毎日新聞)とか、平成8年4月15日、イタドリと間違えて天ぷらにして食べ、6人が歩行困難や錯乱、手足のしびれを訴え、2人が入院した(読売新聞)などがあります。
 薬としては、胃痙攣・喘息・神経痛などの鎮痛剤、瞳孔調節麻痺などに使われるとのことです。

春植物については、ここ(用語解説)で詳しく説明してあります。


花模様