FILE71  ワルナスビ   Solanum carolinense L.
図1 花壇を占拠したワルナスビ
図2 茎・葉柄の刺 図3 刺は鋭く硬い 図4 星状毛も密に生える
図5 長花柱花 図6 短花柱花
図7 長・短花柱花が同一花序に咲いている例
図8 発達の悪い短花柱 図9 普通の短花柱
図10 長・短花柱花を並べて比較した 図11 雌しべの柱頭と雄しべの葯の先端
図12 葯の先端の穴から花粉を出す。 図13 果実。左右交互に花序軸に付くところが面白い。

 ワルナスビは北アメリカ原産の帰化植物で、花壇や芝生などでは、どうにもならない雑草です。名付け親は牧野富太郎で、「植物一日一題 牧野富太郎著 博品社」によれば、命名の経緯は次のようになっています。

 「ワルナスビとは「悪る茄子」の意である。…我が圃中に植えた。さあ事だ。それは見かけによらず悪草で、それからというものは、年を逐うてその強力な地下茎が土中深く四方に蔓こり始末におえないので、その後はこの草に愛想を尽かして根絶させようとしてその地下茎を引き除いても引き除いても切れて残り、それからまた盛んに芽出って来て今日でもまだ取り切れなく、隣の農家の畑へも侵入するという有様。イヤハヤ困ったもんである。それでも綺麗な花が咲くとか見事な実がなるとかすればともかくだが、花も実もなんら観るに足らないヤクザものだから仕方ない。こんな草を負いこんだら災難だ。………。
 この始末の悪い草、何にも利用のない害草に悪るナスビとは打ってつけた佳名であると思っている。そしてその名がすこぶる奇抜だから一度聞いたら忘れっこがない。」

 さてこのワルナスビは、異型花柱の花です。異型花柱花といってもサクラソウなどとは異なり、雄しべには違いが観られず、雌しべの花柱の長さだけが異なっているので、他花受粉にどのような効果があるかは、私には不明です。また、図8のように、柱頭の発達の極めて悪い花も時々見られます。これはおそらく雌しべが退化していく傾向にあるもののようです。なお、図7のように、同じ花序の中で、長花柱花と短花柱花とが並んで咲いている場合もあります。
 雄しべの葯の先端には穴があいており、そこから花粉が出てきます。顕微鏡で見ていますと、時々花粉がもぞもぞと動きます。よく観察していると葯の中に小さな昆虫が入っていて花粉を押し出しているのです。図12がその場面を撮影したもので(激しく動くのでブレていますが)、左の穴の中に何か小さな赤い点(眼)が見えると思います。
大阪市立自然史博物館のQ&Aのコーナーへ問い合わせたところ、カメムシの幼虫ではないかとの回答を得ました。そのほかアザミウマの仲間も花の中を這い回っていました。

 

花模様